今回は腹横筋の作用を再確認するため書いています。
お腹は、おもに、腹直筋(ふくちょくきん)、外腹斜筋(がいふくしゃきん)、内腹斜筋(ないふくしゃきん)、腹横筋(ふくおうきん)の4 つの筋肉から構成されています。
他のコラムでもお話しましたが、表に位置する腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋(内腹斜筋はローカル筋に分類されることもあります)はグローバル筋に分類され、力を発生することにより脊椎の保護、運動に関与しています。
腹横筋は深部に位置するローカル筋であり、
グローバル筋とは分離したかたちで、姿勢の調整などに作用しています。
腹横筋の作用について 機能・起始停止など
腹横筋は、脊椎の安定化に重要な役割を果たします。
最近では、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋などのグローバル筋群へのトレーニングに加えて、ローカル筋群に注目した脊椎の安定性のためのトレーニングが注目されています。
腹横筋は、内腹斜筋の下にあり、お腹の筋肉のうち最も深くに位置しています。
内臓を納める腹腔(ふくくう)を内側へ押して、お腹を凹ませたり、腹圧を高めて、重力に対して内臓を支える役目があります。
また横隔膜(おうかくまく)と拮抗的に作用し、息を吐くときの主力となる筋肉です。
日常生活では、腹圧を高め、くしゃみや咳、排便、排尿をする際に働きます。
内臓を保護し、よい姿勢を保つために、補助的に活動します。
腹横筋の起始停止については他のコラムでもまとめましたが、あらためて。
鼠径靭帯(そけいじんたい)、腸骨稜(ちょうこつりょう)、そして、第6(~第12)肋軟骨内側で横隔膜(おうかくまく)と接するところから起こり、体幹周囲を横断し、上中間部の腹横筋の線維は腹直筋鞘(ふくちょくきんしょう)に合流して正中の白線に達し、腹横筋の下部は内腹斜筋の停止部と合流して恥骨稜(ちこつりょう)に停止しています。
腹横筋の作用について 腹横筋の評価
腹横筋は機能を把握することが重要ですが、
深部に位置するため、腹横筋の収縮を観察することができず、また、腹横筋は、骨の運動に関与していないため評価することが難しかったりします。
研究室などでは、ワイヤー電極を用いた筋電図によって、腹横筋の活動を記録する方法や、超音波診断装置が用いられ評価されています。
超音波診断装置は腹横筋、外腹斜筋、内腹斜筋それぞれの作用を、画像上の形態変化としてリアルタイムで観察することができ、正常の状態では、ローカル筋群の腹横筋は、グローバル筋群の外腹斜筋や内腹斜筋とは独立して機能しているのが確認できるとのこと、また、これが腰痛患者では、腹横筋は外腹斜筋や内腹斜筋と分離して収縮することができないというから、心を刺激されます。
腹横筋の作用として
腰痛などの疾患とお腹の筋肉との関係を調べた研究は多くあり、その中でも腹横筋に関する研究結果として、脊椎の運動に関与し負担の分散、また、姿勢保持にも重要な役割を果たしているという結果が散見できます。
くびれをつくる筋肉としても知られている腹横筋は、脊椎の安定化に重要な役割を果たすことがあげられますが、腹横筋のエクササイズにより姿勢変化が短時間ではなく保持されるという報告もされています。
腹横筋と腰側の奥にある多裂筋を同時に収縮させるエクササイズにより、その前と直後で体幹の回旋角度と骨盤後傾位でのシルエットに変化が認められたとのことです。
この理由として、筋力増強や可動域改善によるものではなく、腹横筋が働き、脊椎の安定性が得られ運動のしやすい条件が整ったのではないかと考察されています。
腹横筋は腹圧を高めたり、腹部内臓の保護といった働きがありますが、上述したように、その働きから、くびれをつくる筋肉として、また、よい姿勢を保つための補助として作用、活躍しているのです。
腹横筋エクササイズが身体運動に与える影響
一之瀬巳幸1},田口直彦1),山口光國2)
1)あおば整形外科リハビリテーション科,2)昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーション部